■ 『スリランカを旅する』![]() どこに旅しようか考えていたときのこと。「椰子の木が茂る、仏教遺跡のある南の島」の話を聞きました。仏跡というと暑くて埃っぽい地にあるものと思っていた私は、「青い海」と「椰子の木」に魅かれスリランカ行きを決めたのでした。 コロンボへは直行便で約9時間。常夏の島です。抜けるような青空が広がり、太陽がじりじりと照りつけてきます。 かつて「セイロン島」と呼ばれたこの国は、北海道をひと回り小さくしたほどの大きさです。島中にバスの路線が走っていて、移動はとても便利です。町にはバスターミナルがあり、目的地行きのバスを見つけ乗り込めばOK。もちろん地元の人の重要な足でもあるので、いつも満員です。 スリランカの仏跡といえば中央部の「文化三角地帯」と呼ばれる地域が有名ですが、南部には大乗仏教遺跡が残っています。そのひとつブドゥルワーガラは、ジャングルで発見された磨崖仏。ウェッラワーヤからバスで10分、そこから森の小道を歩いていきます。30分ほどで道がひらけ、目の前に15mほどの岩壁に彫られた7体の仏像が現れました。とてもおだやかなお顔。帽子をとり手を合わせました。聞こえてくるのは鳥の声と風の音だけ。「何でこんなところに」と不思議になります。9世紀頃の作といわれていますが、当時の都からも遠く離れたこの地になぜ作られたのか、今も謎だそうです。 翌日、ウェッラワーヤでバスを待っていました。小さいながらも分岐の町なので、次々とバスが停まります。シンハラ語の読めない私に、おじさんがバスが来る度に「違うよ」「あれは各駅停車だ」などと声をかけてくれます。彼の仕事はバス待ちの客にビスケットやナッツなどを売ること。バスに詳しいはずです。「来たら呼んであげるから、お茶でも飲んでなよ」との言葉に甘え、目の前の店に入りました。 お茶を頼むと、ミルクと砂糖たっぷりの紅茶と、パンが盛られたお盆が運ばれてきました。好きなものを食べて、食べた分だけ払うシステムです。スリランカでは意外にもパンがよく食べられ、ジャムパンやコロッケパンなど種類も豊富でおいしいのです。 おじさんの呼び声で無事乗り込んだバスは、もちろん満席。約5時間の道のりです。すると前の席の少年が私に席を譲ってくれました。外国人だからでしょうか。バスに限らず、スリランカ人はとても親切。地元の人からホスピタリティあふれるもてなしをあちこちで受けました。 窓の外を眺めていると、後ろから肩をたたかれました。見るとお坊さんが乗り込んできます。私の座ってる席は運転席のすぐ後ろ。一番いい席です。私と隣に座っていたおじさんは席を空けました。スリランカでは僧侶にはもちろん、お年寄りや女性に席を譲ることは当然のことで、とても自然な光景です。 その後滞在した町々では、寺院を訪ねて回りました。本堂の内壁には派手な彩色の絵が描かれています。どれもがお釈迦さまの名場面。お坊さんが絵を見ながらお話をしてくれます。とてもわかりやすく、その様子が目に見えるようです。人々はよくお寺を訪れます。特に満月の日は休日となり、花や供物を持ってお参りに行きます。また、日曜日には日曜学校が開かれ、子どもたちが仏教のお話を聞きに集まります。こうやって子どもの頃から仏教に親しんでいるのです。 今でも目を閉じると、目の前に広がる美しい海、緑豊かな風景と人々の明るい笑顔が浮かんできます。ゆったりとした時間の流れの中で、人々は仏教の教えとともにおだやかで心豊かな生活を営んでいます。「また来よう」と、帰りの飛行機の中で心に誓ったのでした。 (2002年9月15日) →TOP PAGEへ |
2002年初めて訪れたスリランカについての寄稿文です。 SZI(SOTO禅インターナショナル)会報掲載記事 Vol.22(2003-1-15) ■ 花を捧げ手を合わせる女子学生たち。ブッダガヤから運ばれた樹齢2000年の菩提樹の前で ![]() ■ 小さなお寺でまだ湯気の立つお供物が目に止まった。赤米、野菜カレーとバナナがお香と供えられている ![]() ■ ブドゥルワーガラの菩薩像。鳥の声しか聞こえない緑の中でひとり仏像と対面した |
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